生プーアル・24年秋南糯山大樹
生プーアル・24年秋南糯山大樹


販売価格: 4,560円~30,210円(税込)
オプションにより価格が変わる場合もあります。
商品詳細
【ご案内】2025年より茶葉紹介方法が文章解説に進化しました。
・茶葉の特徴をまとめた説明文
・大高勇気バイヤー視点の解説
・産地や環境についての紹介文 3つの視点から、わかりやすく解説します。
【生プーアル茶 南糯山 (2024年秋)】は、透明感のある味わいとやさしい甘みが静かに広がる、澄んだ飲み心地の一杯です。 本ロットは**芽と葉のバランス**の中でも、とくに芽比率を高めて仕立てており、芽が多いほど生まれる“とろり”とした舌触りとなめらかさが際立ちます。 お湯を注ぐと、清らかな若葉の香りの奥にほのかな蜜のニュアンスがふわりと立ちのぼり、すっきりとした気配が広がります。 口に含むと、まず“さらり”、続いて“とろり”と質感が移ろい、癖や苦味のないやさしい甘みが舌をやさしく包み込みます。 余韻には澄んだ甘さが長く残り、爽快感と透明感が口中に伸びゆくため、初めての生プーアルにもおすすめできる、バランスのよい秋茶です。
【大高勇気バイヤー視点の解説】 南糯山で秋に摘み取った若い芽を中心に仕上げた、清澄な口当たりのロットです。芽比率を高めることで舌触りに自然な“とろみ”が生まれ、やわらかな甘みと透明感が同時に立ち上がります。 注湯すると、若葉の清香に淡い花蜜のニュアンスが重なり、澄んだ香りが静かに広がります。口に含むと、最初はさらり、その直後にとろりと質感が移ろい、苦渋の少ない甘みが舌面をやさしく覆います。後口には清らかな甘香と軽い清涼感が長く残り、回甘が静かに続きます。 バイヤー視点では、新芽の充実度と外観の端正さを高く評価しました。各地で茶葉を見てきましたが、ここまで美しい新芽を豊富に含む秋茶は多くありません。見た目・香味・後味の三拍子が揃い、初めての生プーアルにも無理なく寄り添う生プーアルとして自信をもってお薦めいたします。
生プーアル・南糯山秋茶生産日:2024年10月10日
賞味期限:50年
古茶林が息づく甘香の郷──多依寨(ドォイィジャイ)
多依寨は、中国雲南省西双版納(シーサンパンナ)州勐海県・南糯山の中腹、標高およそ1,400メートルに位置する山里です。山肌を覆う原生林には樹齢数百年の古茶樹が点在し、少数民族ハニ族の暮らしとともに、昔ながらの自然栽培が守られてきました。
南糯山特有の赤い酸性土壌と、昼夜の寒暖差を生む高地気候、そして一年を通じて発生する潤いある霧が、茶葉にしっとりとした甘みと爽やかな芳香を授けます。春にはハニ族の手によって一芯二葉が丁寧に摘み取られ、揉捻と殺青を穏やかに施す伝統工程で、生プーアル茶へと仕上げられます。
多依寨の生プーアル茶は、淡い黄金色の茶湯から立ち上がる蜜柑の花を思わせる甘い香気と、ほんのり柑橘を帯びた清涼感が特徴です。ひと口含むと、とろりとした質感とともに優しい甘みが舌を包み込み、わずかな苦みが瞬時に甘露へ転じる“喉越しの変化”が心地よく続きます。飲み進めるごとに、古茶林ならではの奥行きある甘香と滑らかな喉ごしが重なり合い、穏やかな余韻を長く残します。
多依寨が育んだ、古樹の生命力と山霧の潤いを映す生プーアル茶。
自然の甘香が重なる一杯を、どうぞゆったりとご堪能ください。
私たちは、原産地で育まれた茶葉を〈正山茶〉と定義し、その土地に息づく文化と歴史を尊重してお届けします。現地での実地検証と卸先向け産地研修資料に基づき、ロットの来歴・製法・品質の根拠を明示し、専門家として責任をもって、どなたにもわかりやすく解説することをお約束します。
[勐海(孟海)・南糯山 多依寨]茶区ガイド――[瑞香と勁骨、“孟海のしなやかな芯”]
1概要
多依寨(ドゥオイージャイ)は、勐海県・南糯山の中腹〜尾根帯に広がる古茶園群の代表格。南向き〜南東向きの斜面に“林地茶園(森の中の茶畑)”が島状に点在し、標高は概ね1,300〜1,700m帯。南糯山らしい瑞々しい花香(瑞香)と、孟海系に特有のしなやかな勁骨(ボディ)を、高い清潔感で同居させるのが最大の魅力です。杯中では白花〜蘭様の花蜜香に、熟柑・蜜蝋のニュアンスが重なり、入口に触れる微細な苦底がすぐ甘露へ切り替わり、喉奥でロングテールを描く――いわゆる「苦尽甘来」の王道。雑味の少ない“細い水”で骨格を組みながら、中盤からは張りのある粘性が現れます。若茶は明度と骨格の両立、経年で蜜層と軽い香木の陰影が整い、立体感が増していきます。
2地理環境
尾根と谷が幾重にも重なる南糯山の中でも、多依寨は斜面形の整いと霧の“かかり・抜け”のバランスがよい帯域。放射冷却で夜間に冷気がやさしく沈み、朝霧は立ちやすくも過湿に傾きにくい。高木の樹冠が直射をやわらげ、古茶樹は半日陰の拡散光下でゆっくり生育します。土壌は花崗岩〜砂岩由来の赤壌土に厚い腐植が乗り、排水と保水のバランスが秀逸。根は岩の裂隙と腐植層を縫うように深く張り、清潔なミネラル感が“バランス”を整えます。林地茶園では広葉樹・蘭科・シダ類が混生し、生物多様性が微気候を安定化。施肥・整枝を抑えた低介入管理、落葉還元や渓畔林の保全が一般的で、渋みの角を立てずに香り密度と回甘の速度を後押しします。南糯山の“柔×骨格”を最もバランス良く映す舞台です。
3到達の難しさ
南糯山は幹線からのアクセスが比較的良好な反面、多依寨の古茶園は林道の先で細かく散在し、最終区間は小径歩行が基本。雨期は路面の崩れや泥濘、谷筋の増水で車両が入れず、搬出は今も人力比率が高めです。畑は小区画のモザイク状で、一度に扱える生葉量は限定的。選芽精度を上げ、単樹・単片区・単日でのロット運用を志向すると歩留まりはさらに低下します。霧や小雨で採摘可能日が削られる年は供給が“細切れ”になりやすく、結果として多依寨名義の高純度ロットは常に少量。極端に“秘境的”ではないが、届きやすさと届きにくさの中間にある現実的な希少――それが価格と評価の底を支えます。名が通るほどに、園地・樹齢・採摘日・加工所の明示や現地タグ等のトレーサビリティが重視されます。
4歴史の輪郭
南糯山は勐海の古典産地として早くから名が立ち、多依寨も伝統的な晒青毛茶の供給地として地域の交易と共に歩んできました。2000年代後半〜2010年代、単一産地・単区画の価値が再評価される潮流の中で、多依寨は南糯山の“標準形”を確認する座標として存在感を高めます。試飲会や現地レポートでは、瑞香(白花〜蘭様)としなやかな勁骨、速やかな回甘という三要素が評価軸として定着。並行して、畑・樹齢・緯度経度・加工所・採摘日の表示や、収穫〜製茶工程の可視化が進み、名義混同やエリア外原料の混入を避ける動きが強化されました。古典的骨格を保ちながら清潔感を高める選別・衛生基準の導入により、“南糯のやさしさに勁骨を添えた”多依寨の表現が安定しています。
5産地が育む味わい
香りは白花〜蘭様の高く澄んだ花蜜香に、柑橘果皮や蜜蝋、熟柑を思わせる甘い厚み。入口で微細な苦底が一閃し、直ちに清らかな甘露へ反転して喉奥に長く滞在します。塩梅は清潔で渋みの角は立ちにくい一方、孟海系らしい“芯の勁さ”が中盤から支えに入る。テクスチャは“糸のように細い水”を骨格に、ごく上品な粘性が重なって余韻は静謐に長く伸びます。易武系の薄荷塘や茶坪が明度や直線で魅せるのに対し、多依寨は“瑞香×勁骨”の均衡で印象づけるタイプ。若茶は明澄と力感の同居、3〜5年で蜜層が厚みを増し、10年級で軽い香木・薬香の陰影が加わり、山韻が深まります。食中適性も高く、淡味の出汁や白身魚、蒸し料理と合わせても輪郭が崩れにくいのが利点です。
6“孟海・瑞香×勁骨”の基準地という位置づけ
多依寨のキーフレーズは「“孟海・瑞香×勁骨”の基準地」。勐海系の厚み・力感を持ちながら、南糯山らしい瑞香と清潔感で過度な強靭さを丸め、香り−水−甘の三要素を最も分かりやすく提示します。買付・作柄評価の現場では、まず多依寨で“甘の質量/回甘の速度・滞留/骨格の勁さ”をゼロ点確認し、巴達・布朗山系の直線的な力感、景迈山の幽香と油潤、易武(刮風寨・麻黒等)の香揚・水柔との相対評価に進む手順が定着。単独でも完成度が高い一方、ブレンド設計では中低域の厚みと喉韻の持続を与える“支点”として機能します。初学者には“孟海のやさしさと芯”を、愛好家には“蜜の質と骨格の違い”を学ぶ参照地です。
7南糯山多依寨のまとめ
多依寨の価値は、孟海系の“骨格”を持ちながら、南糯山らしい瑞香と清潔な明度で輪郭を研ぎ澄ます点にあります。白花〜蘭様のトップがすっと立ち、入口で微細な苦底が一瞬触れてすぐ甘露へ切り替わる――この“苦尽甘来”の速度と、喉奥に残る甘さの滞在時間が、多依寨を“わかりやすく、しかし奥行きある”一杯にします。水路は糸のように細く、雑味が少ないため、蜜蝋や熟柑、軽い香木のニュアンスが濁らず層を成す。結果として、香りは明るいのに、味は腰があるという“静的な強さ”が成立します。 産地間比較でも位置は鮮明です。布朗山・老班章の直線的な力感や厚い苦底に比べ、多依寨は角を立てずに芯を通す“柔剛併せ呑む”タイプ。景迈山の幽香・油潤と比べると、香りはややハイキーで、喉韻はより張りのある直線。易武の刮風寨系(冷水河の「軽い苦→長い甘」、茶坪の直線、黒水梁子の峯の冷明)と比べれば、香りの帯域はやや低めに腰を据え、甘の量感と骨格で語る座標です。つまり多依寨は、南糯山の“やさしさ”と孟海系の“芯”を最も均整良く体現する基準地――“瑞香×勁骨”の標準形と言えます。 希少性は、誇張に頼らず地勢と運用が支えます。アクセスは極端な秘境ではないものの、古茶園は小区画モザイクで、人力搬出と選芽優先の運用が供給をきゅっと引き締める。霧や小雨で採摘可能日が削られる年は供給が断続的になり、結果として“多依寨名義の高純度ロット”は常に少量です。トレーサビリティ(園地・樹齢・採摘日・加工所・現地タグ等)の確からしさが、信頼と価格を底上げします。 教育と実務の場面でも、有用性は高い。作柄確認では“甘の質量/回甘の速度・滞留/骨格の張り”を測るゼロ点に、ブレンド設計では全体に中低域の厚みと喉韻の持続を与える支点に――同じ一杯が、初めての飲み手には“南糯=やさしさと芯”を、熟練には“蜜の質と骨格の微差”を教えてくれます。杯のなかに“場所の記憶”を、瑞香と勁骨の二重奏で結ぶ――それが南糯山・多依寨の本質です。
・茶葉の特徴をまとめた説明文
・大高勇気バイヤー視点の解説
・産地や環境についての紹介文 3つの視点から、わかりやすく解説します。
【生プーアル茶 南糯山 (2024年秋)】は、透明感のある味わいとやさしい甘みが静かに広がる、澄んだ飲み心地の一杯です。 本ロットは**芽と葉のバランス**の中でも、とくに芽比率を高めて仕立てており、芽が多いほど生まれる“とろり”とした舌触りとなめらかさが際立ちます。 お湯を注ぐと、清らかな若葉の香りの奥にほのかな蜜のニュアンスがふわりと立ちのぼり、すっきりとした気配が広がります。 口に含むと、まず“さらり”、続いて“とろり”と質感が移ろい、癖や苦味のないやさしい甘みが舌をやさしく包み込みます。 余韻には澄んだ甘さが長く残り、爽快感と透明感が口中に伸びゆくため、初めての生プーアルにもおすすめできる、バランスのよい秋茶です。
【大高勇気バイヤー視点の解説】 南糯山で秋に摘み取った若い芽を中心に仕上げた、清澄な口当たりのロットです。芽比率を高めることで舌触りに自然な“とろみ”が生まれ、やわらかな甘みと透明感が同時に立ち上がります。 注湯すると、若葉の清香に淡い花蜜のニュアンスが重なり、澄んだ香りが静かに広がります。口に含むと、最初はさらり、その直後にとろりと質感が移ろい、苦渋の少ない甘みが舌面をやさしく覆います。後口には清らかな甘香と軽い清涼感が長く残り、回甘が静かに続きます。 バイヤー視点では、新芽の充実度と外観の端正さを高く評価しました。各地で茶葉を見てきましたが、ここまで美しい新芽を豊富に含む秋茶は多くありません。見た目・香味・後味の三拍子が揃い、初めての生プーアルにも無理なく寄り添う生プーアルとして自信をもってお薦めいたします。
生プーアル・南糯山秋茶生産日:2024年10月10日
賞味期限:50年
古茶林が息づく甘香の郷──多依寨(ドォイィジャイ)
多依寨は、中国雲南省西双版納(シーサンパンナ)州勐海県・南糯山の中腹、標高およそ1,400メートルに位置する山里です。山肌を覆う原生林には樹齢数百年の古茶樹が点在し、少数民族ハニ族の暮らしとともに、昔ながらの自然栽培が守られてきました。
南糯山特有の赤い酸性土壌と、昼夜の寒暖差を生む高地気候、そして一年を通じて発生する潤いある霧が、茶葉にしっとりとした甘みと爽やかな芳香を授けます。春にはハニ族の手によって一芯二葉が丁寧に摘み取られ、揉捻と殺青を穏やかに施す伝統工程で、生プーアル茶へと仕上げられます。
多依寨の生プーアル茶は、淡い黄金色の茶湯から立ち上がる蜜柑の花を思わせる甘い香気と、ほんのり柑橘を帯びた清涼感が特徴です。ひと口含むと、とろりとした質感とともに優しい甘みが舌を包み込み、わずかな苦みが瞬時に甘露へ転じる“喉越しの変化”が心地よく続きます。飲み進めるごとに、古茶林ならではの奥行きある甘香と滑らかな喉ごしが重なり合い、穏やかな余韻を長く残します。
多依寨が育んだ、古樹の生命力と山霧の潤いを映す生プーアル茶。
自然の甘香が重なる一杯を、どうぞゆったりとご堪能ください。
私たちは、原産地で育まれた茶葉を〈正山茶〉と定義し、その土地に息づく文化と歴史を尊重してお届けします。現地での実地検証と卸先向け産地研修資料に基づき、ロットの来歴・製法・品質の根拠を明示し、専門家として責任をもって、どなたにもわかりやすく解説することをお約束します。
[勐海(孟海)・南糯山 多依寨]茶区ガイド――[瑞香と勁骨、“孟海のしなやかな芯”]
1概要
多依寨(ドゥオイージャイ)は、勐海県・南糯山の中腹〜尾根帯に広がる古茶園群の代表格。南向き〜南東向きの斜面に“林地茶園(森の中の茶畑)”が島状に点在し、標高は概ね1,300〜1,700m帯。南糯山らしい瑞々しい花香(瑞香)と、孟海系に特有のしなやかな勁骨(ボディ)を、高い清潔感で同居させるのが最大の魅力です。杯中では白花〜蘭様の花蜜香に、熟柑・蜜蝋のニュアンスが重なり、入口に触れる微細な苦底がすぐ甘露へ切り替わり、喉奥でロングテールを描く――いわゆる「苦尽甘来」の王道。雑味の少ない“細い水”で骨格を組みながら、中盤からは張りのある粘性が現れます。若茶は明度と骨格の両立、経年で蜜層と軽い香木の陰影が整い、立体感が増していきます。
2地理環境
尾根と谷が幾重にも重なる南糯山の中でも、多依寨は斜面形の整いと霧の“かかり・抜け”のバランスがよい帯域。放射冷却で夜間に冷気がやさしく沈み、朝霧は立ちやすくも過湿に傾きにくい。高木の樹冠が直射をやわらげ、古茶樹は半日陰の拡散光下でゆっくり生育します。土壌は花崗岩〜砂岩由来の赤壌土に厚い腐植が乗り、排水と保水のバランスが秀逸。根は岩の裂隙と腐植層を縫うように深く張り、清潔なミネラル感が“バランス”を整えます。林地茶園では広葉樹・蘭科・シダ類が混生し、生物多様性が微気候を安定化。施肥・整枝を抑えた低介入管理、落葉還元や渓畔林の保全が一般的で、渋みの角を立てずに香り密度と回甘の速度を後押しします。南糯山の“柔×骨格”を最もバランス良く映す舞台です。
3到達の難しさ
南糯山は幹線からのアクセスが比較的良好な反面、多依寨の古茶園は林道の先で細かく散在し、最終区間は小径歩行が基本。雨期は路面の崩れや泥濘、谷筋の増水で車両が入れず、搬出は今も人力比率が高めです。畑は小区画のモザイク状で、一度に扱える生葉量は限定的。選芽精度を上げ、単樹・単片区・単日でのロット運用を志向すると歩留まりはさらに低下します。霧や小雨で採摘可能日が削られる年は供給が“細切れ”になりやすく、結果として多依寨名義の高純度ロットは常に少量。極端に“秘境的”ではないが、届きやすさと届きにくさの中間にある現実的な希少――それが価格と評価の底を支えます。名が通るほどに、園地・樹齢・採摘日・加工所の明示や現地タグ等のトレーサビリティが重視されます。
4歴史の輪郭
南糯山は勐海の古典産地として早くから名が立ち、多依寨も伝統的な晒青毛茶の供給地として地域の交易と共に歩んできました。2000年代後半〜2010年代、単一産地・単区画の価値が再評価される潮流の中で、多依寨は南糯山の“標準形”を確認する座標として存在感を高めます。試飲会や現地レポートでは、瑞香(白花〜蘭様)としなやかな勁骨、速やかな回甘という三要素が評価軸として定着。並行して、畑・樹齢・緯度経度・加工所・採摘日の表示や、収穫〜製茶工程の可視化が進み、名義混同やエリア外原料の混入を避ける動きが強化されました。古典的骨格を保ちながら清潔感を高める選別・衛生基準の導入により、“南糯のやさしさに勁骨を添えた”多依寨の表現が安定しています。
5産地が育む味わい
香りは白花〜蘭様の高く澄んだ花蜜香に、柑橘果皮や蜜蝋、熟柑を思わせる甘い厚み。入口で微細な苦底が一閃し、直ちに清らかな甘露へ反転して喉奥に長く滞在します。塩梅は清潔で渋みの角は立ちにくい一方、孟海系らしい“芯の勁さ”が中盤から支えに入る。テクスチャは“糸のように細い水”を骨格に、ごく上品な粘性が重なって余韻は静謐に長く伸びます。易武系の薄荷塘や茶坪が明度や直線で魅せるのに対し、多依寨は“瑞香×勁骨”の均衡で印象づけるタイプ。若茶は明澄と力感の同居、3〜5年で蜜層が厚みを増し、10年級で軽い香木・薬香の陰影が加わり、山韻が深まります。食中適性も高く、淡味の出汁や白身魚、蒸し料理と合わせても輪郭が崩れにくいのが利点です。
6“孟海・瑞香×勁骨”の基準地という位置づけ
多依寨のキーフレーズは「“孟海・瑞香×勁骨”の基準地」。勐海系の厚み・力感を持ちながら、南糯山らしい瑞香と清潔感で過度な強靭さを丸め、香り−水−甘の三要素を最も分かりやすく提示します。買付・作柄評価の現場では、まず多依寨で“甘の質量/回甘の速度・滞留/骨格の勁さ”をゼロ点確認し、巴達・布朗山系の直線的な力感、景迈山の幽香と油潤、易武(刮風寨・麻黒等)の香揚・水柔との相対評価に進む手順が定着。単独でも完成度が高い一方、ブレンド設計では中低域の厚みと喉韻の持続を与える“支点”として機能します。初学者には“孟海のやさしさと芯”を、愛好家には“蜜の質と骨格の違い”を学ぶ参照地です。
7南糯山多依寨のまとめ
多依寨の価値は、孟海系の“骨格”を持ちながら、南糯山らしい瑞香と清潔な明度で輪郭を研ぎ澄ます点にあります。白花〜蘭様のトップがすっと立ち、入口で微細な苦底が一瞬触れてすぐ甘露へ切り替わる――この“苦尽甘来”の速度と、喉奥に残る甘さの滞在時間が、多依寨を“わかりやすく、しかし奥行きある”一杯にします。水路は糸のように細く、雑味が少ないため、蜜蝋や熟柑、軽い香木のニュアンスが濁らず層を成す。結果として、香りは明るいのに、味は腰があるという“静的な強さ”が成立します。 産地間比較でも位置は鮮明です。布朗山・老班章の直線的な力感や厚い苦底に比べ、多依寨は角を立てずに芯を通す“柔剛併せ呑む”タイプ。景迈山の幽香・油潤と比べると、香りはややハイキーで、喉韻はより張りのある直線。易武の刮風寨系(冷水河の「軽い苦→長い甘」、茶坪の直線、黒水梁子の峯の冷明)と比べれば、香りの帯域はやや低めに腰を据え、甘の量感と骨格で語る座標です。つまり多依寨は、南糯山の“やさしさ”と孟海系の“芯”を最も均整良く体現する基準地――“瑞香×勁骨”の標準形と言えます。 希少性は、誇張に頼らず地勢と運用が支えます。アクセスは極端な秘境ではないものの、古茶園は小区画モザイクで、人力搬出と選芽優先の運用が供給をきゅっと引き締める。霧や小雨で採摘可能日が削られる年は供給が断続的になり、結果として“多依寨名義の高純度ロット”は常に少量です。トレーサビリティ(園地・樹齢・採摘日・加工所・現地タグ等)の確からしさが、信頼と価格を底上げします。 教育と実務の場面でも、有用性は高い。作柄確認では“甘の質量/回甘の速度・滞留/骨格の張り”を測るゼロ点に、ブレンド設計では全体に中低域の厚みと喉韻の持続を与える支点に――同じ一杯が、初めての飲み手には“南糯=やさしさと芯”を、熟練には“蜜の質と骨格の微差”を教えてくれます。杯のなかに“場所の記憶”を、瑞香と勁骨の二重奏で結ぶ――それが南糯山・多依寨の本質です。